2009年04月22日

中国式の教育@家庭

社員一人一人の状況把握や交流の一環として、個人面談を度々行っています。
そんな中の一幕。


Aさん:「会社はなぜ一気に組織を拡大しないんですか?!」

私:「業務量に変動があっても、人員の調整は困難であり、会社はそのあたりのリスクを考慮しないといけないです。」

Aさん:「それじゃあ儲からないじゃないですか。」

私:「大きくしたら儲かるというわけじゃないし、リスクを無視して拡大することは難しいかな。」

Aさん:「それじゃあリスクを分担してくれる人がいたらいいってことですよね?!」

私:「というと?」

Aさん:「私が会社に出資します。」

私:「・・・ちなみにいくら?」

Aさん:「最低30万元はすぐにでも。」

 

Aさん、うちの最年少組の一人で、普段はおとなしい、ほんわかした雰囲気の可愛らしい女の子です。

データエントリー業務の中心で頑張るオペレーターで、アルバイトの管理なども最近では担当しています。

といっても新卒で入社一年。まだまだ稼ぎも責任も、そんなに大きくはありません。

 

でも、彼女が言い出した、30万元という数字は、大連市の平均年収の十年分の額に相当します。

 

どういうことかと聞いてみると、

 

「普通に働いても稼ぎは知れている。それよりどこかでしっかり勝負して、自分を成長させなければならない。」

「そのためには、両親は私を支持してくれる。お金は両親が出すが、私が決めたら必ず出すと言ってくれている。」

「リスクを取らなければ、上にあがっていくことはできないから。」

 

だそうです。

 

ご両親は事業家、商売人のようで、彼女の経歴・スキルからは連想しにくいほどの難しい話や考え方がぽんぽん出てくるところを見ると、ご両親は日頃からその手の事柄を娘に叩き込んでいるような印象です。

 

しかし、その教育方針の実行と娘の将来のために、平均年収の10倍の額をぽんと出すということに驚かされます。中国の活力の源泉を見る思いです。

 

実はこういう話はよく聞くのですが、自分の身近なところで目の当たりにするとやはり面白いですね。

 

同時に、こういうやり方が良いか悪いのかは一概には言えないと思いますが、少なくとも日本ではそうやって将来を見据えて勝負しようとする人は珍しいんだろうなぁと寂しく思うのでした。
ラベル:大連 中国
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2008年10月23日

中国金融界の企業誘致戦術

中国の政府は、ある産業を誘致する際に、かなり積極的な優遇措置を設けます。

ソフト産業に対して大連市が制定している「二免三減(利益が出た最初の2年は免税、後の3年は法人税半額)」はその代表的な例の一つです。

以前訪問した黒龍江省のある都市では、
・1000平米ものオフィススペースを一年無料、後の三年半額で賃貸する
・外貨の売上から人民元への換金時に、1元換金するごとに0.1元支給する
などという、凄まじく太っ腹な制度もありました。

この夏には、新たに北京、上海、深センにおいて、金融業界の誘致のためのインセンティブ制度が発表されました。

対象は証券会社、銀行、保険会社といった金融企業ですが、それぞれの都市の代表的な優遇措置を記します。(参考:プライスウォーターハウスクーパーズさん発行のBusiness News Flash 9月号)

上海
・シニアエグゼキュティブに対して、最大20万元の住宅補助金。
・シニアエグゼキュティブに対して、最大40%の所得税還付。

深セン
・詳細未発表。

北京
・金融セクターに大きく貢献した者に対して個人所得税の免除。
・不動産や車の購入、または専門課程の研修費用として、30万元又は納付済みの個人所得税80%のいずれか少ない金額の還付。

これまた凄まじく太っ腹です。

面白いのが、企業誘致をしたいはずですが、インセンティブがほとんどそこに従事する個人向けになっているところです。

結局稟議を通すのはそこに直接関わる人間だから、ということなのか、より有能な人材を獲得できるようにという配慮なのか。

日本も少しはこういった点は見習って、海外や地方からより積極的に優秀な人材を集める工夫と努力をしても良いと思います。

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2008年10月16日

中国で働く日本人たち

前回の記事に関して、別の視点でもう少しだけ。

前回紹介したダイアモンドオンラインの記事は、ビジネス的な存在価値が曖昧な人々を批判する内容でまとまっていますが、一方で、中国に来ている日本人の多くが、ビジネス的な存在価値やキャリア形成を重視する価値観とは違う価値観を持っているという点には言及していません。

日本人が中国で増えているという現象は、雇用を求めて人々が海外に流れた結果と見ることもできますが、一つのライフスタイルの発生とも取れるのではないでしょうか。

今日本の人々は、別に日本で就職することにこだわる必要がないのです。

東京都の一般の求人誌を見ていても、地方の大学の求人掲示板を見ていても、中国での採用案件はありふれたものになっていまし、海外で暮らすことに関する情報も、ネットの発達によって十分に得ることができます。

そんな一つの選択肢として、人生のある時期を、異国で過ごし、異国で働きながら、友人を作り、文化を知り、ある日また別の場所へ行く。

今の状況は、こういうスタイルが実行できる環境が整ったというだけに過ぎない、と見ることもできます。

実際、私の周りには、のんびりと、それでいてとても楽しそうに、中国での生活を営んでいる人々もいます。もちろんその人たちも、労働と納税の義務は果たしているわけですから、誰に文句を言われる筋合いもないでしょう。

工場やソフト開発だけでなく、生計を立てる場所という意味においても、グローバルに考えられる時代だということ。

そしてそこで生きるための雇用が成立するのは、そこにその人材ニーズがあるからです。このニーズにこそ実は問題意識を持っていますが、それはまた別のエントリーで。
ラベル:大連 中国 人材
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2008年10月14日

中国にいるダメ日本人?

中国で活躍する多くの日本人の友人を持つ自分にとって、下記記事のタイトルは刺激的に過ぎるのですが、ちょっとお時間を頂戴して、是非一読頂きたい。

「勤勉有能な日本人観が中国で逆転! 上海で増殖する“ダメ日本人”たち」 - Diamond Online
http://diamond.jp/series/china_report/10009/

・・・

・・・

読んで頂けましたか?

この記事でベースになっている現象は、下記段落に端的に記されています。

===
上海には日本人向けの特殊なポジションがある。学歴不問、専門能力不問、語学不問という「日本人職」だ。筆者も上海で勤務をしていた頃、人材紹介会社から3つの不問、つまり“3F”人材をたくさん紹介してもらった。これらの層は想像以上に厚く、「日本人」のみで採用が決まる上海には、常に絶え間なく半端な若者が流れ込んでいることがわかる。
===

私が知っているのは主に大連市の状況ですが、大きくは違っていません。

そして、この記事の筆者のレポートしている内容も、多少偏っているとは思うものの、大枠として、私の実感とも一致する部分が多いのも事実です。

私もこの3年半の間に少なくない数の日本人を面接してきましたが、目的意識が曖昧・希薄と感じた人材がとても多かった。この記事にあるような半端な印象は否めません。

中にはもちろん一緒に仕事がしたいと思わせられる人、情熱を持って夢に向かっている人も沢山いました。

しかし、多くのケースで、「この人はこのまま中国で過ごして、どうするつもりなのだろう」と思わずにはいられなかったのです。


以前、オフショア開発専門コンサルタントであるアイコーチの幸地社長に、こんなことを言われたことがあります。まだ大連で起業したばかりの頃で、自分の事業を上手く人に伝えられなかった頃です。

「三好さんはどうして中国にいるの?日本人が中国にいても迫力がないし、期待も持てないよ。今も、将来も。」

とっても厳しい言葉でしたが、幸地社長の言わんとしている意味はすぐに分かりました。

野心ある若い中国人が日本で努力している姿を見れば、その人物がいずれ本国に戻り、学んだことを基にして大きく飛躍する姿がイメージがもてます。

現に、このパターンで数々の実業家が中国で生まれています。

しかし、逆のパターンはあるのでしょうか。中国で得たものを、中国から見て先進国である日本に持ち帰って、その日本で大きく活躍するケース。無いとは言いませんが、なかなか想像が難しいものがあります。

私はキャリア形成が目的でも、日本に何かを持ち帰ることが目的でもなかったのですが、外国で働く意味というものを考えさせられました。


私なりの結論はこうです。

日本人が外国で働く最大のメリットは、自国との違いを肌で体感し、自国のあり方を相対的に見ることができる点です。

日本にいるだけでは、なかなか常識を疑えない。相対的に自国を見ることができれば、これによって、あるべき姿や、非合理的な暗黙の了解や常識の存在に気づき、グローバル時代に相応しい価値感覚やバランス感覚を持って物事にあたることができるようになる。

こういう人材はとても貴重だと、今後の日本にもっともっと必要な人材像だと、私は思います。

ですから、自らの人材としての価値向上に関心があり、いずれは日本に帰国することも考えている人は、このことを意識しながら中国でのキャリアを磨けるかというのが一つのポイントとなると思います。

<追記 2008/10/16>
この記事の続きを
http://blog.huojin.com/article/108114097.html
に書きました。
ラベル:中国 人材 大連
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2008年10月06日

中国の情報開示制度

中国政府がまたとんでもない暴挙に出てきています。

(9/25)中国のIT情報開示制度、日米欧の経済界が懸念表明へ- Nikkei Net
http://www.nikkei.co.jp/china/news/index.aspx?n=MMCHc1007025092008

今、中国政府が導入を進めようとしているのが、「ITセキュリティー製品の強制認証」と呼ばれるもので、その内容は恐るべきものです。

なんと、「基本ソフト(OS)一体型の製品」「ネットワークの監視システム」など13分野に関わる製品のソフトメーカーは、中国市場への進出に際して、そのソースコード(設計図)を開示するように求められているのです。

さもなければ、中国市場への進出を認可しない、という、自国の市場の強さを盾に、かなり強気の制度です。

これはとんでもない法制度です。

政府へ公開するということは、中国企業へ公開することとほぼ同義です。
中国で有力な企業が、政府と密接な関わりを持ちながら事業を進めていることは、暗黙の了解事項です。

これでは、知的財産保護も何もない、あまりにもあからさまでいやらしい手段で、他国の知的創造物を掠め取ろうとしているようにしか見えない。

諸外国から、中国人民の知的財産保護に対する意識の低さを常に問題視されていて、中国政府は自国の発展のためにも知財保護に注力していかなければならないと、自らも語っているにもかかわらず、国単位でこういう動きをしてしまう。

なんとも残念でなりません。

労働契約法の改正も凄まじい内容ではありましたが、少なくともあの法律では人民の生活を守ろうという大義がありましたが(その長期的な効果については大きく疑問がありますが)、今回の法制度には何の正当性も見当たりません。

何より、このような不合理が許されるような市場では公平な競争など成り立たない。
市場原理に照らしても、中国に害を成す制度にも成りかねません。

中国は本当に世界からの尊敬を集める国家になろうと思うなら、こういった厚顔無恥且つ短絡的な行動で、自らを貶めるべきではないと思います。

ラベル:中国の法律
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2008年09月11日

貧困層に購買力は無いか。

前回「中国に13億人の市場は存在するか」というテーマで簡単な記事を書きました

その記事の続きです。

13億幻想論者の主張の中に、

沿岸部の比較的豊かな層以外は、農村部を中心とした未だに貧困にあえぐ層であり、食べることで精一杯の彼らに購買力は無い

というものがありました。

農村部の9億人は、本当に購買力が無く、ビジネスのターゲットと見なすべきではないのでしょうか。


この問題を考える上で、中国の事例ではありませんが、非常に参考とすべき事例があります。

バングラデシュの、グラミンフォンというビジネスモデルです。

グラミンフォンは、グラミン銀行でのマイクロクレジットの先駆的な取り組みや、それによってノーベル平和賞を受賞したことで有名な、ムハマド・ユヌス氏の発案で設立された会社です。

「ノーベル平和賞のムハマド・ユヌス氏とは?」


今日、人類の約半数が、安定した電話通信サービスを受けることができない状況にあるそうです。
都市部の有線通信網を農村へ引いてくるには莫大な投資が必要ですし、投資額を回収できる見込みも無いため、全く普及が進んでいませんでした。


そこで、グラミンフォンは、バングラデシュの農村部の貧困層へ、電話サービスへのアクセスを提供することを目的として設立されました。

この層の平均所得は、年収にして約3万円程度。通常の電話サービスは使えない所得水準です。

しかし、グラミンフォンは、この世界に電話へのアクセスの普及と、莫大な収益を実現させました。

詳しいビジネスモデルはまた別の機会に紹介したいと思いますが、簡単に言うと下記の要領です。

グラミン銀行が、農村の貧しい女性に小額の融資をする。

女性は、そのお金で、グラミンフォンから携帯電話一台と、ソーラー式の充電器一台を買う。

この女性が、その携帯電話で「電話屋さん」を村に開き、村人に電話利用サービスを提供する。

同じ仕組みを、全国展開、

2006年には農村の全人口の半数を超える1億人以上が電話を利用できるようになり、
同社の純利益は2億ドル近くにまで伸び、50万人以上の雇用を創出した。

この強烈な取り組みは、現在さまざまな方面での応用展開が研究されており、
インドや中国での実施が実現されれば、何百億ドルものビジネスになる可能性があるそうです。

実はこの取り組みは、実現されるまでに、北欧の電話通信会社や日本の商社の協力などがあって、さまざまな障害を乗り越えることができているのですが、要は、

・貧困層はお金が無いから物が買えない
・農村部にサービスを届けるインフラを構築することは採算に合わない

という従来の認識は揺らいできているということです。

この認識を覆すカギは、

・技術と、(農村部へ無線を飛ばす)
・起業家と、(電話屋さんを開く女性)
・わずかな投資/融資 (マイクロクレジット)

です。(括弧内は今回紹介したケースでの要素)


中国でこの事例がすぐさま当てはまるかというと、そこまで単純な話ではないと思っています。
きっと、多くの障害があるでしょうし、でもそれを乗り越えることもやはりできるんじゃないかなとも思っています。

もう一方で、中国の農村も、貧しいばかりではなくなってきています。

十数年前の中国では、天安門広場と毛沢東を一目見ようと北京に上京してきた農民は、見るからに貧しいボロボロの格好の人が多かったそうです。

今も、天安門広場と毛沢東を一目見ようと上京してくる農民の方は多いそうですが、その身なりは意外と小奇麗で、手にはデジカメを持っているそうです。

都市部と農村の格差が激しく問題なのは事実ですが、都市部と比べれば緩やかながら、農村部も確かに、成長を続けてきています。

農村部も、上にあげたグラミンフォンの事例のような意味でなく、ごく一般的な感覚からしても、購買力旺盛な勢力として台頭してくる日も、そう遠くないのかもしれません。
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2008年09月09日

中国に13億人の市場は存在するか。

中国の魅力を語る際の最も代表的なイメージとして、

その市場の巨大さ、が挙げられると思います。

「13億人が一人一円ずつお金を出したら13億円」

「人口のわずか0.1%、千人に一人の人しか買ってくれなくてもミリオンヒット」

こういった具合です。


しかし、中国通や、真剣に中国ビジネスに取り組んでいる人々の間では、

「13億の市場など存在しない」

というのはもはや定説になっています。

以下これを13億幻想論とでも呼びましょう。

これは一体どういうことなのか。


13億幻想論者は、主に以下の2派に分かれるように思います。


■13億市場はあるのかもしれないが、決してそこには届きはしないという意味で幻想派。

・中国は法治国家の体をなしておらず、人治国家とでも呼べる状態のため、まっとうにビジネスを進めることができない。

・知的財産が守られず、低価格で(且つ粗悪な)コピー商品などが出回り、市場を掴むことができない。

→13億人を相手に商売などまともにやったらできはしない。

法による保護が期待できない上に、所謂袖の下のやり取りが罷り通り、それがなければビジネスが進まなかったり、それが上手い人々が勝ちあがったりする市場では、フェアな競争など不可能だという主張です。

従来は、こちらの派閥が主流でした。(今でも根強く残っていますが)


90年代に中国進出を目指した日本企業の失敗事例などを語る際に、上記の主張がよく使われているように思います。


もう一方の派閥は、

■実際問題として、13億の市場など存在しない派。

・中国の都市部と農村部の格差は激しく、一つの市場としてまとめてみることはできない。

・都市部の人口は4億人程度であり、まともな購買力を持つのは都市人口のみである。

・中国の国土は広すぎて、経済は都市毎に分断されている。ある都市で事業を展開できたとしても、それを全国に広げていくのは至難の業であり、高い可能性でその間に事業が疲弊してしまうだろう。

・各都市毎に経済・市場が分断されているとすれば、最大規模の上海市場でも1300万人市場でしかない。

これらは直接的な障害ではないはずですが、中国を13億人の超巨大市場と捉えていると確かに躓いてしまうポイントであると思います。

前者(市場には届かない派)のような状況は今も確かにあるのですが、私が中国で接する若手の経営者たちを見ていると、そういった世界も次第に主流ではなくなっていくのかもしれないと感じることがあります。

後者(実際存在しない派)は、より私個人の実感にも近いです。

ただ、沿岸部の4億人はそれ自体で非常に大きな経済圏であり、人数だけで言えば、世界の消費ピラミッドの頂点にあるアメリカ市場の3億よりも大きな経済圏であることになります。

13億幻想論者の中には、市場規模が13億に達しないという結論からやや飛躍し、「中国はそれほど魅力的な市場ではないよ」という論調もありますが、私には4億というのは非常に大きな市場に思えます。

ここで一点、注目しておくべきポイントがあります。

都市部には4億人の市場。では残りの9億人は本当に市場として見る価値が無いのかどうか。

次回の記事で、この問題について触れてみたいと思います。
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ラベル:BOP 中国
posted by miyohiro at 11:24| Comment(2) | TrackBack(0) | 中国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年05月16日

中国の労働契約法について。3

5/9のエントリーで、改定労働契約法の具体的な変更点について述べました

今回は、その変更によって、我々外資系BPOサービスプロバイダーがどのような影響を被るのか、そしてそれに対して私がどう考えるのかについて、書きたいと思います。

新しい労働契約法の規定を受けて、

・これまで対象外だった社員も、社会保険への加入が義務化
・バイト契約、短期契約となっていた社員の契約形態の、正社員への締結し直し
・未消化の有給休暇の買取が義務化

など、直接費用が発生するものがいくつかあり、会社によっては30%以上管理費が増えるところもあるのではないでしょうか。(社会保険は手取り給与の30%〜となっています。)

弊社の場合は、パートタイムワーカーが占める割合が、同業他社に比べて高かったため、一部正社員に登用するなど、なかなか大きな影響がありました。

また、正社員は2度連続して契約を更新すると、終身雇用契約に切り替わりますが、これによって雇用が硬直化するかと言うと、必ずしもそうではないと感じています。

今回の改訂によって、会社は人材が契約期間中に離職しないように、違約金を課すことができなくなりました。

実は、これによって離職を抑えられなくなるという面の方が、終身雇用によって解雇できない、という状況よりも、圧倒的に多いように思います。今回の改正によって、人材流動性は、より高まったと見るべきでしょう。

また、離職意思がない社員は、いつまでも会社にいられるわけですから、上記の離職率のリスク上昇と合わせて、一つの結論を導き出せます。

それは、今まで以上に、社員に対する教育・トレーニングが重要になってくる、ということです。

残りたい社員を、使えないままにしておく無駄は許容できません。何がなんでも使える人材になってもらう必要があります。

また、離れたい社員は、より良い環境と、より良いキャリアを求めています。他社よりも成長できる機会を用意することで、会社の魅力を高め、しいては傾向として希薄と言われている帰属意識を高めることも期待できます。

そして、最近弊社は社員研修への投資を、従来より大幅に増やしました。

結果に現れるといいなぁと思っています。

弊社の目標の一つは、弊社を「卒業」する社員が、どの会社に行っても活躍するような、人材輩出企業になることです。教育により力を入れるという対策は、この目標とも合致する対策です。というわけで、この面から見れば、今回の法改訂は弊社にとって特に騒ぐほどのものでもない、というところです。

ただし、事業として規模を拡大していくことになると、いささか不都合もあります。

次回は、事業規模という観点から、今回の法改正の影響を述べてみます。
posted by miyohiro at 18:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 中国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年05月09日

中国の労働契約法について。2

さて、今回は5/4のエントリーで取り上げた、新しい労働契約法の具体的な内容についてです。

かいつまんで最重要点を述べると、新労働契約法では、雇用側からの契約解除が極端に困難になったことと、2回以上の連続契約更新などの一定の条件を満たすと、終身雇用(無固定期間)契約に強制的に移行されることです。

その他、労働者側の権利が大幅に強化される内容となりました。
これまでの、1年毎に契約更新していればよかった状態からすると、かなり極端な変更です。
非常に中国らしい展開で、初めてこの改正案を読んだ時には思わず吹き出しました。
しかし、労働者にとって、これまでがそれだけ不利だったということでもあり、長い目で見た経済成長にはプラスに働くのでしょう。

ただ、我々のような中小企業には非常に大きなリスク要因の増大であり、多くの経営者が頭を悩ませられているのも事実です。

また、今回の法改正で、人材派遣(労務派遣)に関する規定が明文化されました。
これまで、人材の派遣に関して明確な規定がなかったようなのですが、今後は、雇用することに対するリスクが増してくるので、雇用者としての責任を部分的に負担してくれる労務派遣のサービスを活用することの重要性も増してくることになるでしょう。

その他の重要な変更点について下記にまとめます。

・フルタイムワーカーとは、出社日から1ヶ月以内に必ず労働契約を結ばなくてはならない。
・1年以内に労働契約を結ばなかった場合は、自動的に無固定期間契約とみなされる。
・労働契約を結ぶ際には、身分証を預かったり、保証金を積ませたり、契約解除による違約金を設定したりしてはならない。
・フルタイムワーカーには、全員保険などの社会保障制度に加入させ、会社が相応の負担をしなければならない。
・試用期間を過ぎると、原則会社は従業員を解雇できない。(例外はあるが条件は厳しい)
・契約期間中に解雇する場合は、企業は経済保証金(退職金)を支払わなければならない。
・人材はいつでも辞めることができ、会社はそれにペナルティを課すなどの防止手段を取れない。
・一年を通して未消化分として残った有給休暇は、一日あたり給与の3倍の金額で、残存日数分を会社側が買い取らなければならない。
・所謂アルバイトをフルタイムで活用することはできない。アルバイト契約は、一日4時間を超えず、週累計が24時間を超えない範囲でのみ可能。それを超えるとフルタイムの労働契約を結ぶ必要がある。
・就業規則や賃金規定などを改訂する場合には、従業員の代表会への説明と、意見の収集、それを元に再検討、再度説明、という手順を踏まなくてはならない。

などなど。他にも変更的はありますが、現実的に影響の度合いが高いのはこの辺りだと思います。

次回は、この変更が、我々中国に拠点を構える外資系BPOサービスプロバイダーにどのような影響を与え、どう対応していくか、私の考えを書きたいと思います。
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2008年05月04日

中国の労働契約法について。1

中国という国は、社会主義国家という看板のわりに、労働者にとってかなり厳しい法体制を持った国でした。

2007年末までの中国では、労働者は基本的に会社と期限付き契約を結び、通知期間さえ確保すれば(またいくつかのそれほど厳しくない条件さえクリアすれば)、会社はいつでも契約を解除することができました。

特殊技能を持つ専門職や高級職を除く一般の職では、その契約期間も1年間というものが多く、例え15年連続で契約を更新していても、ある年突然契約不更新を会社から通告されれば、労働者はなすすべもなく職を失う、という状態でした。

中国全土の全ての「正社員」が、日本で言う契約社員と同じような状態だったのです。

これは、資本側(経営側)にとって非常に有利でやりやすい状況を整え、労働者の生活の改善よりも、資本市場の発展を優先させる、政府の「成長路線」に則った戦略でした。国が発展するためには、人民に苦労をかけてもとにかく会社を儲けさせて、高成長を遂げることが重要だと、この数十年の中国政府は考えていたわけです。

しかし、ここ十数年の急成長の結果、貧富の格差は深刻な社会問題となり、人民の不満は抑えきれないところまで来てしまっていたようでした。

そこで、昨年中国政府は、労使の根幹となる法律、労働法と労働契約法のうち、労働契約法を大幅に、そして資本側からすればあまりにも極端に、改正案を発表しました。

草案が発表された当時は、そのあまりに極端な内容に資本側が猛反発し、中国政府は資本側の要求をどこまで反映させるのかというようなことが噂されたそうです。例えば、米ウォールマートは、この法改正を通すならば、全店舗を中国から撤退させるとまで見得を切ったそうです。直接の雇用とそれに連なるバリューチェーンの規模で、数万とも数十万ともいえる雇用に影響力を持つウォルマートの発言を政府は無視できるのかと注目されたそうですが、有識者は、労働者の党であるはずの共産党が、これ以上資本側におもねる態度は取れない、党と国の面子にかけてこの法改正を通すだろうと話していました。

そして、その予想通り、改正案は議会を通過。本年2008年1月1日からの施行が決定されました。

法改正の詳しい内容については次回。
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